男塾開講

光陰矢のごとく、やわらかな陽春に包まれてスタートした新年度も、すでに3か月目を迎えました。子どもたちは学校で、若者は社会で、新しい環境に精一杯チャレンジしていることでしょう。
当協会もすでに新年度の事業が始まっておりますが、継続の事業をより充実させること、新しい事業では、子どもたちの力がより表現できる仲間づくり、地域づくり、社会づくりを念頭に置いて推進していく所存です。

日本で「子どもの権利条約」が批准されて20年がたちます。子どもの権利について、子どもも含めて論じ合うことがありません。一人ひとりの子どもの権利は守られているのでしょうか。
不登校、引きこもり、ニート等の課題は、彼らが加齢していく上で、その解決が非常に難しくなってきています。発達障害という言葉も安易に使われ、解決を見ずに社会が納得する落としどころとして使われているようにも思われます。

子どもは元気に育つ方がいい。さまざまな経験をして社会と関わる力を身に着け、社会に役に立つ市民に成長するのが彼にとっても家族にとっても社会にとっても望ましい。でも、何かの歯車がかみ合わず、引きこもりやニートになっている若者はどうしたらいいのでしょうか。

当協会の研究部門「日本こども未来研究所」は、若者の自立をテーマに研究を進めています。特に若者の自立支援を国の施策として取り組んでいるイギリスの事例を多く学んできました。人種差別と階級差別、貧困からくる無学、無教養が生み出す生活困難状況。日本では考えられないほどの差別もある中で、イギリス国家はどのような若者支援を進めているのでしょうか。
国も違い、文化も違う国の全くの模倣は意味がありません。日本人のアイデンティティを活かした施策を、NPOから発信することができたらと考えています。

ところで、現在の日本の社会状況を考えた時、私たち大人は自立しているのだろうかと疑問を持ちます。短期間で首相が交代する政治劇。マスコミにより作られている感のある橋下政権の施策を、しっかり読み解く力を持っているのでしょうか。
子ども、若者の自立を考えるとき、市民としての責任ある大人になっているのか、いささか疑問符のつく大人も多く見受けられます。
自立した大人になるには青年期の自立養成が必要です。青年期の自立には子ども期の自立養成が必要です。反対もしかり。子ども期に、必要な思考、体験による子ども期の自立を獲得した上で、青年期を迎えた者は、青年としての思考、行動の自立を獲得していくのが容易になるのではないでしょうか。青年期に青年らしい自立心を持った青年は、その後の社会経験を経て、社会人としての自覚、家族を大切に、会社、地域、政治等との関わりを通して、自己の確立をすることが容易になるのではないでしょうか。

当協会は長年、子ども・若者の自立支援をコンセプトに事業を推進してきましたが、同時に求められるのが、大人の自立です。子ども、若者には、自立した大人による、人間愛をベースにした関わり、答えをすぐに求めないゆったりとした支援が必要と思われます。
「人は育ってその気になって人間になる」と教育学者太田堯先生はおっしゃいました。名言です。与えられた情報のみに依拠した考え方ではなく、疑問・問題・課題を自ら追及、解決する行動力が必要です。いくつになっても、夢や希望に向かって突き進む人間の姿を、子どもや若者に見せていきたいと思います。

近年「育メン」「パパの育児参加」「男性育休」などの言葉がはやっています。男は社会に、女は家庭にという考えが根底から変わろうとしています。先んじて、男女雇用均等法や男女協働参画社会づくり施策などがその方向性を示していたとも考えられます。日本国経済の斜陽が、男も女も青年も、すべてが働き手となり納税者になることを求めているようです。ですから、イケメンとイクメンを混同したようなマスコミ情報に踊らされることなく、男女両性の人権と、子育ての協働参加の精神をしっかり考えたいと思います。しかし、子育てをパパもママも協働することは大切なことです。子ども・若者の自立に、良い影響を及ぼすことを期待します。
そうです、団塊の世代以前にみられる男女分業が、退職後の男性を、ぬれ落ち葉や厄介者扱いにしている要素でもあります。

大人の自立を訴える当協会の第一弾の対象は、団塊の世代の生活力をつけること。男の自立を目指す「男塾」です。食事、洗濯家事全般は女がするものと信じていたお父さんたちに、「俺流の生活力」を身に付けていただきたいと思っています。妻と同じ主婦になることはないでしょう。俺流の主夫を目指しましょう。
生活力アップ、発言力アップ、存在感アップ間違い無し。そしてちょっと先行く先輩シニアの生き方を学び、俺流を確立していくお手伝いができたらいいなと考えています。

(北摂こども文化協会機関誌「ハックルベリー」2012年6月号より)