セカンドサーブ

今、プロテニスプレーヤー錦織圭選手の活躍により、日本テニス界が湧いています。
勝利するたびに世界ランキングもぐんぐん上昇し、テニスファンでなくても日本中が彼の応援団のような雰囲気です。期待された全仏オープンでは惜しくもベスト8で地元選手に競り負けてしまいましたが、それでも手に汗にぎる熱戦を見せてくれた錦織選手に、多くの方が拍手を送ったのではないでしょうか。

テニスの試合会場では、すり鉢状のスタンドから観客たちの熱い視線が選手に向けられます。テニスではどのプレーも必ずサーブから始まります。男子では時速200キロ以上ものスピードが出るそうですね。まさに渾身のファーストサーブ。
でもテニスでは、そのファーストサーブが失敗しても、セカンドサーブが認められています。このセカンドサーブがあるからこそ、一本目を力一杯チャレンジできるのでしょうね。このルールは、良くできていると思います。

チャレンジと安定は、子育て支援の極意のように思います。取り組む事業の中で私たちも「やってごらん、チャレンジしてごらん」と子どもたちにけしかけます。失敗を恐れて尻込みしてしまう子どももいます。
でも、テニスのサーブのように失敗しても2本目があると分かったら「思いっきり!」ができるのではないでしょうか。
「次がある」という安心感。それでは子どもたちが「次がある」と安心できる信頼はどこで生まれるのでしょうか。
一番はやはり家庭でしょう。生まれ育った家庭、親、兄弟姉妹、祖父母など家族との絆の中に、その信頼は育まれるでしょう。学校もそうであって欲しいですね。子どもにとって、先生との信頼関係は最も重要です。友だちとの関係も、先生との信頼関係が確立していれば「次がある」信頼が生まれるでしょう。
それでも残念ながら、子どもにとって学校が居場所にならないケースもありますが、そこにもセカンドサーブがあればいいですね。

今、フリースクールや家庭学習を義務教育の制度内に位置付ける法案が、国会への提出にむけ検討されています。学校外での学習を義務教育として認める制度です。時間はかかるかもしれませんが、人々の知恵と熱意は社会におけるさまざまなセカンドサーブを創りだそうとしています。

話は変わりますが、女子フィギュアスケートの浅田真央ちゃんが先日、競技復帰の意向を示しました。
1年ほど前、彼女自身、悩み苦しんだ末に出された休養宣言かと思いますが、「突っ走るだけでなく、休んでもいいじゃない」というメッセージは子ども・若者・大人たちも、意外だけどほっとした感じを受けたのではないでしょうか。
そしてこの度の復帰宣言は、見事なセカンドサーブです。
がんばれ真央ちゃん、この一年の休養が、真央ちゃんが真央ちゃんらしく奏でるセカンドステージを創り出すのではないでしょうか。当協会を含め、子育てに関わる人々が、子どもたちの自己肯定感を育むうえで、このセカンドサーブがある安心感を伝えていきたいと思う今日この頃です。

(北摂こども文化協会機関誌「ハックルベリー」2015年9月号より)
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