サッカーワールドカップ予選とキャリア教育

猛暑を超える記録的な酷暑の毎日。ただ立っているだけでも激しく体力を消耗するなか、全国高校野球 夏の選手権大会の予選が各地でおこなわれている。高校球児は甲子園という夢舞台をめざし、文字通り熱い戦いを繰り広げている。

野球もさることながら少し時間を戻し、およそ1か月前の6月4日、サッカー日本代表も国民の期待を背負い、熱い戦いを繰り広げた。
その日ライバルオーストラリアとの激闘の末2014年サッカーワールドカップブラジル大会への出場を決めた。試合内容の記憶をたどると、日本がやや押し気味に試合を進めていたが、終盤オーストラリアの選手のシュートがGK川島選手の手をかすめてゴール隅ぎりぎりに入ってしまった。
残り時間もあとわずか、大半の観戦者は「負けた!」と思ったのではないだろうか。
試合前の状況は、勝たなくても引き分けでブラジルへの切符が手に入るという有利な状況だったのに……。しかし、勝負の神様は日本代表チームとそのサポーターを見捨てはしなかった。試合終了直前、日本にPK(ペナルティーキック)のチャンスが訪れた。
残り時間やその結果の重要性から相当のプレッシャーがかかる中、本田選手の左足から放たれたボールは、相手ゴールのど真ん中に突き刺さり、その瞬間、選手もサポーターも歓声と共に両手を突き上げた。
奇跡の大勝利。試合ではなくワールドカップブラジル大会への出場権獲得という目標達成の大勝利である。
翌日の新聞各紙は、サッカー日本代表のワールドカップ出場決定を大々的に報じていた。各メディアが多くのサポーターから喜びの声を拾おうとインタビューする中、ある青年のコメントが気にかかった。
彼いわく「半年働いて、あとの半分はサッカー日本代表チームを追いかける生活」をしているという。
同じ日の紙面に、安倍政権「骨太の方針」の素案として「社会保障支出も聖域とせず、見直しを図る」そして「生活保護の支援の在り方を早期に見直す」との方針が新たに示された。若い時、アルバイトで生計を立て、「好きなこと」に重点を置き、後は生活保護のお世話になる…とまでは考えてはいないだろうが、「今を生きる」若者思考が気にかかる。

年金支給や社会保険等、未来への保障が見えにくく、働き方が多様になってきたのも確かである。日本が世界に誇るパナソニックも劇的大赤字決算続きで、3年間で5000人の人員整理だという。切られる側か残る側か? 社員は家族だと明言した創業者故松下幸之助氏は天国でいま何を思っているだろうか。
社会経済が停滞すると生活困窮者が増え、子どもの貧困化が進むのはまぬがれない。

当協会は子どもの権利条約のもと、子どもたちが心身ともに豊かに生きられる環境づくりを事業展開しているが、子どもの貧困化により、子どものあらゆる権利が奪われてはならないと心が痛む。子どもには、幸せになる権利、自分らしく生きる権利があるのだから。
その上で大事なのは、ひとりひとりが、自分の人生をどうデザインするか、そのためには今、何をするのかを考えること。そのためには子どもが成長する過程で、考える力をつけることが大切である。当協会はその「考える力」をつける様々な機会を提供することを使命とし、各事業の充実を図っている。

当協会が実施している「ライフデザインセミナー」はまさに自分の将来を考える機会を提供する事業である。フリーターが増え始めた2000年ごろから文部科学省はキャリア教育の大切さを提言し始めた。2003年には作家の村上龍さんが「13歳のハローワーク」を発表し「好きなことを仕事に」をキーワードに、子どもたちに将来のヒントを提供した。
当協会も大阪市と共同で「若者のライフワークデザイン」を開発した。13歳のハローワーク公式サイト編集長松尾和祥氏は、『好きを仕事に、ということは嫌なことはしなくていいという意味ではない。どんな仕事にも厳しい時はある。そこで負けずに、努力を続けると仕事に楽しみが見つかる。これが「好きを仕事に」の本質であり、日々を積み重ねるという「継続力」も大事である』と言っておられた。

サッカーワールドカップブラジル大会出場権を獲得した日本代表の試合から話が広がったが、代表メンバーの誰一人をとっても、努力と継続が起源であることは確かである。子どものころから大好きだったサッカーを仕事にして、たくさんのサポーターに応援され、家族に支えられ、この上ない喜びを味わうことができる幸せは、彼らの努力と継続の結果である。

(北摂こども文化協会機関誌「ハックルベリー」2013年6月号より)
コメント